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My Queen Karo マイ・クイーン・カロ

オランダ映画 (2009)

1974年のアムステルダムを舞台に、ベルギーからやってきたラーヴェン、ダリアの夫婦と、一人っ子のカロの物語。ラーヴェンは、好きなように生きるためアムステルダムにやってきて、5年間使われていない古い煉瓦の建物を見つけ、そこに仲間と不法侵入してスコット(squat)のコミュニティーを作り上げる〔日本語ではスクウォットと言うが、それは米国式の発音が定着したため。英国式の発音ではスコットだし、オランダ語でもスコット、さらに、スコットを形成する人々は、日本語でスコッター(squatter)と呼ばれる。似たような標記なのに日本語での言い方が違っているのは、別々に使われるようになったためか? どちらも、たいていの人は初めてきく言葉だと思うので、ここではスコット、スコッターで統一する〕。アムステルダムでは、1970年代、投機のために空き家のまま放置された建物にヒッピーが多数入り込み、最終的には1980年3月の暴動に発展する。スコッター達の中には、性や麻薬に溺れた毎日を送ったものもいたが、この映画のラーヴェンも、如何なる制約も嫌って自由奔放に生きようとした一人。そして、夫の愛を独占したいダリアとの間に亀裂が生じる。この映画の主役は、タイトルロールのカロだが、映画が描きたいのはスコットにおける人間関係。Samuel du Chatinierは、スコットに後から参入する市民活動家アリスの息子ダニエル役で出演している。残念ながら、ダニエルのクローズアップは一度もなく、画面の片隅にさっと映ることがほとんどだが、映画の最初と最後を除き、結構出番は多い。ここでは、前後の説明部分を除き、ダニエルの登場場面に焦点を当てて紹介する。

ベルギーでの生活が嫌になったラーヴェンは、妻のダリアと一人娘のカロを連れてアムステルダムに行き、かねてから聞いていたスコッターとして自由に生きる道を選ぶ。ダリアは、それほど自由奔放ではないが、ラーヴェンを愛しているので一緒に行動する。小さなカロには選択肢はない。ラーヴェンは、ベルギーから別行動で合流したバレや、地元アムステルダムで連絡を取り合っていたヨープらと共に、5年間放置されていた建物の2階に侵入して自分達のスコットとする。内部は壁のないワン・フロアで、そこで、自由な、言葉を変えれば、プライバシーの一切ない、共同生活が始まる。最初は全面的に賛同していたダリアだったが、ラーヴェンが、スコッターたちを支援する地元の女性活動家アリスをスコットに招いたことから、ラーヴェンには強い怒りを、アリスには強い嫉妬を抱くようになる。アリスは、息子のダニエルと娘のタラも一緒に連れて来た。カロは、最初、アリスを強く嫌い、アリスの子供たちにも無関心だったが、ダニエルが美少年だったことから、次第に関心を寄せるようになり、週末に海水浴に出かけたことで虜になる。父ラーヴェンと母ダリアの仲が険悪となり、寂しかったことも、ダニエルへの幼い愛に拍車をかけた。カロとダニエルは、スコットという、フリーセックスの大人の世界の中で、子供らしさを保ちつつ仲を深めていく。しかし、兄妹の父親フランスがスコットを訪れた時、偶然から、ダニエルの置いた蝋燭がカロの髪に引火する事故が起こる。普通なら、これは、カロの両親にとっての重大関心事になるはずなのだが、危険信号を感じたのは、初めてスコットに来たフランスの方だった。彼は、自分の息子や娘をこのような危険な場所に置いておくことは容認できないと判断し、即座に2人を連れ出す。これは、ダニエルとの暮らしが生き甲斐になっていたカロにとっては大きなショックだった。カロは、何とかダニエルの家を捜して訪問し、1泊させてもらう。しかし、寂しさの溜まっていたカロは、子供部屋で寝た時、ついダニエルと抱き会ったまま寝てしまった。翌朝それを見つけた父親のフランスは、息子に悪影響を与えると強く危惧し、カロに二度と近づかないよう言い渡す。スコットに戻ったカロは、そこが、昨日、警官隊によって破壊され、父母が追い出されたことを知る。再び3人だけとなったラーヴェンとダリアとカロは、この先どのように暮らしていくのだろう? スコットでの暮らしで成長したカロは、父と母の別居を勧め、自分は、双方の間を好きな時に行き来して生きていくと宣言する。

Samuel du Chatinierについての情報は全くない。名前のスペルからすればフランス系で、サミュエル・デュ・シャティニィエと呼ぶべきかもしれない。彼は翌年一度だけTVに出ているが、それがオランダのTVシリーズ。だから、オランダ人かもしれない。長髪なのでよく分からないが、顔立ちは整っている。


あらすじ

ラーヴェン、ダリア、カロの3人が、タイトルの題字と同じオレンジ色のフォルクスワーゲン・カルマンギアで、海岸近くの無人の国境を越える〔EU統合の前から、ベルギー/オランダ間の国境には検問がない〕。場面は、いきなり、夜のアムステルダムの とある建物の封鎖された2枚扉の前へと移り、懐中電灯で照らしながら、ラーヴェンともう1人の男がドアに体当たりする(1枚目の写真)。ドアが開き、ラーヴェンは大きな円形のマットレス(直径3メートル程度)を運び込む。「ここは、俺たちのものだ」。会話ではマットレスと言っているが、ただの剥き出しの硬質スポンジだ。その夜は、全員がその上でゴロ寝する。翌日の映像で、侵入した扉が2階だったことが分かる。そこに到達するには工事用の足場を通るしかない。ラーヴェンは、1階を借りている女性(ジャッキー)に頼んで持参の長いコードをコンセントに挿してもらい、それを2階の足場に引っ張り上げる。ジャッキー:「ここの家主、実に嫌な奴なのよ。けど、もし私が手伝ったってばらしたら、キンタマちょんぎるからね」。「分かった」。ラーヴェンはカロを呼び、「奇跡が見たいか?」と訊く。そして、下からのコードと、部屋から引っ張ってきたコードとをつなぐ(2枚目の写真、矢印)。「電気きたぞ!」という声が聞こえ、天井灯が点く。ラーヴェン:「ありがとう」。ジャッキー:「がんばって」。ラーヴェンは中に入って行くと、「下の女性の話じゃ、ここは5年間 空き家だったそうだ」と伝える。部屋に集まるスコッターたちはどんどん増え、それぞれテリトリーを決める。そして、いよいよオープニング。テーブルの上には地元代表のヨープが立ち、乾杯の音頭をとる。「投機反対。建物の荒廃反対。スコッティング〔スコッターになること〕賛成。ベルギー人の侵入賛成。アムステルダムにようこそ。パーティを始めるぞ。飲物も音楽もある。大騒ぎしようぜ!」(3枚目の写真)。かくして、カロを交えた不法占拠はスタートする。
  
  
  

カロは、1階に住むジャッキーと親しくなる。ジャッキーはハンガリーから逃げてきた女性で、子供の頃、水泳でもらったメダルを人生の証しとして大切に持っている〔彼女の勧めで、後になって、カコは水泳を習い始める〕。話の途中で、家主が家賃の回収に訪れる。出てきたジャッキーに、家主は、「ユートピア主義の連中は2階にいるのか?」と訊く。「そうか、地上にユートピアを作るのに忙しいんだな。だが、それも長くないぞ。認可が下り次第、人間のくずどもを追い出してやる」。場面は、若者のデモに変わる。中央には演壇があり、若い女性(アリス)が拡声器を片手に熱弁をふるっている。「やつらは、美しい歴史的な建物を、10分で壊そうとしてるわ。明日には3棟よ。私達市民が立ち上がる時が来たわ…これは義務よ。私達はこの街に住む権利があるわ。ここは我々の街よ。議会は建物を荒れ放題にしたがってるの。なぜか? オフィス街やメトロを作ることが利得を生むからよ。でも、メトロなんて必要?」〔アムステルダムのメトロは1970年に建設が始まるが、一部区間の建設で強い反対運動が起きた〕。ここで、ラーヴェンに肩車されたカロは歓声を上げる(1枚目の写真、矢印の先にカロがいる)「私達に何ができる? 建物を占拠しましょう。入り込んでスコットしましょう。投機家どもは死ねばいい。手遅れになる前に奴らを止めましょう!」。演説を終わって降りて来たアリスは、ラーヴェンに声をかける。「あなた誰?」。「ラーヴェン。革命分子だ」。「ベルギー人?」。「ベルギー人だ」。アリスは、カロが何度も、「私、カロよ」とくり返し、ようやく気付く。「あなたの娘なの?」。ラーヴェンは、「俺のチビ・モンスターだ」と言ってカロを降ろす。アリスは、「で… ラーヴェン、革命分子さん… 私にキスしてくれる?」。ラーヴェンは、喜んでキスするが、それを見たカロは、急にアリスのことが嫌いになる。そして、父をアリスから引き離そうとやっきになる〔ダリアとアリスのつばぜり合いは、重要なテーマなので、丁寧に紹介した〕。その日の夕方、ラーヴェンは、どうやって手に入れたかは分からないが、ダリアに毛皮のロングコートを持って帰る。夜、2人だけになると〔カロは、近くでブランコに乗っている〕、ダリアはコートを着てご満悦で、ラーヴェンと熱々のムード。その時、カロが、「あの女性の名前は?」とわざと水をかける。父:「女性って?」。「パパがキスしてた」。これで雲行きが怪しくなる。ラーヴェンは、「ここに来たのは自由になるためだ。楽しまないと」と言う。ダリア:「あなたが欲しい」。「一緒にいるじゃないか」。「私だけ?」。「ここについたばかりで、もう規則をつくる気か?」。場面は、変わり、占拠したビルの近くの小さな公園で、ラーヴェンと、ベルギーから来たもう1人の男バレが、自作のシーソーの具合を調整している。シーソーには、ニクソンなどの政治家の顔を描いた円盤が複数付いていて、シーソーに合わせて回転する仕掛けだ。ラーヴェンは、シーソーの一方にカロを座らせる。シーソーは2人いないと動かない。バレは近くにいた男の子に、「名前は?」と訊く。「ダニエル」。「座りたいか?」。「うん」(2枚目の写真、矢印)。ダニエルは、近くに住んでいる少年で、偶然だが、アリスの長男でもある。シーソーが動き出すと、カロとダニエルは、お互いに軽い興味を示す(3枚目の写真、背後ではラーヴェンとアリスがキスしている→ダニエルはアリスに付いてきた)。
  
  
  

恐らくその夜。室内では、あちこちで性行為が行われている(1枚目の写真、黄色の矢印、赤の矢印がカロ)。こんなに間近で性行為を見ることは、教育上最悪と言って良い。カロは、父と母に挟まれ、自らを守るようにして眠る。スコットの中の状態が分かる写真が1枚は必要と考えて添付した。翌日、スコットにアリスが訪ねてくる。全体を仕切っているヨープが、アリスに荷物を置くスペースを作ろうとしていると、ダリアが立ち上がってつかつかと寄って来て、それを押しとどめる。「何する、ダリア? 落ち着けよ。スペースを作ってるだけだ」。「なぜ?」。「なぜって…」。埒が明かないと思ったダリアは、つかつかとラーヴェンたちの座っているテーブルに歩いていく。「なんでスペースを作るのよ?」。「アリスがここで暮らすことになった」。「誰が決めたの?」。「俺だ」。「絶対させないわ」。「ダリア、何をこだわってる?」。ダリアは、今度はカロのところにつかつかと歩いていく。そして、もらったばかりの毛皮のコートをつかむと、カロの手を取って出て行く(2枚目の写真)。ダリアは、ラーヴェンと異なり、夫婦の枠組みに固執するタイプなので、夫の浮気に強い憤りを感じたことは理解できる。しかし、カロを連れて劣悪な環境から出て行くというならまだしも、やったことと言えば、質屋に行ってコートをミシンに交換して、また戻って来きただけ。なぜ、ミシンかと言うと、これで演劇用の衣装を製作するためなのだが、それがまたラーヴェンとの間でトラブルとなる。これでは、フリーセックスが目的で自らのスコットを立ち上げたラーヴェンに見捨てられても仕方がない。次の日の夜、カロが夜起きて冷蔵庫に行くと、外の工事用の足場の上に全裸で立っている母に気付く。飛び降りて自殺でもする気なのだろうか? カロの「ママ」という叫び声を聞いて、その場にしゃがみ込んだ母を、カロは抱きしめる(3枚目の写真)。母は、むせび泣いているが、その理由は、カロが母を連れて定位置の寝場所に連れていく途中で明らかになる。父ラーヴェンが、アリスと激しいセックスをしていたのだ。母ダリアは、見捨てられたと感じたに違いない。
  
  
  

翌朝、カロは、1階のジャッキーの部屋に行って遊んでいる。前日、プールに連れて行ってもらった時、カロの泳ぎが下手なのを見て、無料でコーチすると言ってくれたからだ。敵のアリスや、敵愾心の塊のような母、浮気性の父と一緒にいるよりは、カロにとっては気持ちがいい。しかし、そこに父が呼びに来る。2階に行くと、アリスの2人の子供が遊んでいた。父は、「2人は、これからここで暮らす。ダニエルとタラだ」と紹介する(1枚目の写真)。カロは、2人がアリスの子だと知っているので、ほとんど無関心。次のシーンでは、ダリアが昨日手に入れたミシンを使って挑発的なガウンを作っている。アリスに挑戦するためだ。しかし、ラーヴェンは、怒ってツンケンした女性を見限ったようだ。「あいつは、ゲームをしてるだけさ」と相手にしない。その一件のあと、カロは、父ラーヴェンがダニエルたちと遊んでいるのを見る。部屋の壁には、人間の輪郭の絵がいくつも描かれていて、そこに体を合わせる遊びだ。ラーヴェンは、ダニエルに、「もっと、変な格好してみろ」と言い、ダニエルは、柱とマットレスの間で体をよじ曲げる。一方、妹のタラは、輪郭線に体が合うようラーヴェンが直している(2枚目の写真)。しかし、カロは、3人を一切見ようとしないし、ダニエルから、「カロ、一緒に遊ぼう」と声をかけられても、父から、「水泳はどうだった?」と訊かれても何も答えず、洗った水泳着を干している〔ここは、物干し場にもなっている〕。父が、「いったいどうした?」と訊くと、父を叩き、走って出て行く。向かった先は、再び1階のジャッキー。カロがこんな態度に出たのは、父が、アリスの子供にまで優しくしていたからであろう。しばらくすると、母の姉のアンが来たことが分かる。アンが大好きなカロは飛び出て行く。修道女のアンは妹の様子を見るため数日滞在しようと寄っただけで、当然スコッターではない。ラーヴェンに対し、「カロには自分の部屋が要るわ」と、環境の悪いことを指摘する。しかし、「ここには個人専用のものなんてない。あんたの修道院と同じだ」と言われる。「生きる目的は?」。「愛だよ」。「お金はどうしてるの?」。「金持ちから巻き上げる」。「盗みと同じじゃないの」。「(オランダ語じゃ)そう言うのか?」。「『汝、盗むなかれ』よ。聖書をもう一度読みなさい」。「欲しい物を全て手に入れてる奴らがいる。俺たちには何もない。俺は、再配分してるんだ」。「続かないわよ」。姉は、妹のダリアにも生活の不健全さを訴えるが、こちらも聞く耳を持たない。それどころか、姉とカロが寝ると、ラーヴェンとアリスがセックスを楽しんでいる場に行き、積極的に割り込もうとする〔1対2で愛撫しあう→アリスの衝動の意味が理解できない〕。偶然、その姿を見たカロは、悲しくなる。そして、伯母のアンから洗礼を勧められ、そうすれば多くの人に見守られるようになると言われ、意味も分からないまますぐにOKする。翌朝、アンは、コップに水を汲んでくると、カーテンの陰で2人だけで洗礼の儀式を始める。しかし、それに気付いたラーヴェンは、「俺の娘に勝手に洗礼をしたのか?」と責めると、カロをひっつかんで、近くの大きなたらいの水に首まで突っ込み、洗礼を解除しようとする。解放されたカロは、頭が水浸しのまま、耳を抑えてうずくまる。カロを心配して寄って行ったのは、ダニエルだけ。寒いだろうと、毛布をかけてやる(3枚目の写真、横顔しか映らない)。
  
  
  

その夜 ラーヴェンは、カロに、「週末にどこかに行くってのはどうだ?」と訊く。カロは肩をすくめただけ。一緒に見ていたダニエルも、「カロ、一緒に来ないか?」と声をかける。カロはダニエルの顔をじっと見る。その後で、母のところに行って、「週末に出かけるわ」と言うので、行く気になったことが分かる。カロ:「ダニエルとタラ… それにアリスとラーヴェン」。ダニエルの名前が最初に出る。意識し始めた証拠だ。カロ:「一緒に来る?」。母:「いいえ」。「じゃあ、やめる」。「そんなこと言わないの。もう大きいんだから、自分で決めなさい」。カロは行くことにする。アムステルダムは運河の街なので、建物から直接ボートに乗り込むことができる。かくして、5人を乗せた小型のモーターボートは海に向けて出発する(1枚目の写真)。見送っているのはジャッキー。ダリアは部屋からこっそり覗いているだけ。ボートが海に近づき、ダニエルが、「カロ、君、高いとこから飛び込みできる?」と訊く。「もちろん」(2枚目の写真)。陸に上がると、待ってくれていた人が、電気装置を子供たちに見せる。木の台の上には果物が数十個置いてある。「こいつら 腐ってくるほど、大きく叫ぶんだ」(3枚目の写真)。そう言うと、2本の電極を腐った果物に刺す。大きなピーという音がして、3人は耳を押える。男は、カロとダニエルにもやらせる。3人の着ているものを見ると、カロの服が貧相なことが分かる、ダニエルとタラは近くのちゃんとした家に住んでいる。一方のカロは、旅行中に等しいので着る物も限られている。
  
  
  

カロとダニエルとタラは、全裸になって、木製の飛び込み台を上がって行く(1枚目の写真)。先に上がったカロは、ダニエルが台に上がるのを助ける。次のシーンでは3人が台の上に立っている。カロは迷っているようだ。ダニエルが、「飛び込めよ。やれるって言ったろ」と催促する(2枚目の写真)。それでも迷っているので、ダニエルは、カロの腰をつかんで押す。叫び声とともに落ちて行くカロ。「腰掛スタイル」での落下なので、飛び込みにはなっていない。その後は、カメラは水中に固定される。カロが落ちてきて1秒もたたないうちにダニエルが入ってくる。足が真下になっているので、そのまま飛び降りただけだ。水中で2人は手を取り合い、頭を水面に出して泳ぎ始める。手はずっとつないだままだ(3枚目の写真、矢印)。以後、カロはダニエルにぞっこんになる。このシーン、タラは落ちてこないので、怖くて戻ったのだろうか? タラは、男の子のように見えるが、あくまで女の子だ。
  
  
  

その夜は、5人は仮設のバンガローのような所で過す。カロはダニエルにぴったり寄り添って寝ている。ダニエルの顔をうっとりと見た後、指でダニエルの胸のあちこちを触る(1枚目の写真)。翌日も、3人は海で遊び、その間、ラーヴェンとアリスは浜辺で熱々。ラーヴェンの行動規範は分かっているが、女性活動家のアリスはいったいどうなってしまったのかと思う。5人が1泊旅行から戻ると、スコットの中には「壁」ができていた。板を打ち付けただけの簡単なものだが壁は壁で、そこにはドアもあって「部屋」になっている。この「建設」を主導したのはダリアだった。それを見たラーヴェンは激昂する(2枚目の写真、アリスはタラを抱き、右にはダニエルがいる)。しかも、ダリアが「部屋」から出てきて最初に放った言葉は、「あんたは、こっち側で 好きなように暮らせばいい」というもの、これは宣戦布告に等しい。これで、壁のどちら側に暮らすかが重要なポイントになる。ラーヴェンは、ダニエルに、「こっちかあっちか、どっちにいる?」と訊く。「ママといる」。ラーヴェンは、次に、カロに、「お前も、ママといるんだろうな?」と訊く。カロは、ダニエルと一緒にいたいので、何も答えない(3枚目の写真)。そこで、ラーヴェンはカロを抱き上げると、壁の反対側に歩いて行く。アリスも、「ベッドに降ろしてあげるわね」とタラに言い、後に付いて行く。これで海に行った5人は「こちら側」、ダリア1人が「向こう側」となる。分裂は決定的だ。
  
  
  

カロが、壁の「こちら側」で、腐っていそうな果物を探していると、ダリアに「向こう側」に連れ去られる。そこでの会話の一部。「お母さんの言うことが聞けないの?」。「もう母さんじゃない」。「どうして?」。「一緒に暮らしてない」。「どうして、ここで寝ないの?」。「壁を作ったんだから、誰か他の人と暮らしたら?」。結構、醒めた言い方をする子だ。そして、母から、「ここで寝なさい」と言われると、「嫌よ、ダニエルと一緒にいたい」と反対する。そして、次のシーンでは、壁の「こちら側」で、ダニエルたちと遊んでいる。昨日、見せてもらった「腐った果物を叫ばせる」のを再現しようとする。カロがりんごに電極を2本刺し、ダニエルが模型鉄道の電源を入れる。腐り方が少ないので音は小さいが、それでも3人は大喜び。タラは、立ち上がると、「ママ、りんごが叫んでる!」と報告しに行く(1枚目の写真)。ところが、その「ママ」は、ラーヴェンと全裸で愛し合っている。ちょうど、区切りがついたのか、ラーヴェンが「コーヒーを作ってくる」と言って離れたのを見て、ダニエルがアリスに飛びつく。3人は母子だからおかしくはないが、それまで父親以外の男性と裸で抱き合っていた直後に、こんなにじゃれ合うことができるものだろうかと疑問に思う(2・3枚目の写真)。カロは、疎外感からコーヒーを作っている父に寄って行き、抱き付く。その後、カロにとってショッキングなことが起きる。1階のジャッキーが部屋代の滞納により追い出されたのだ。
  
  
  

大事な友達を失ったカロ。後は、ダニエルしかいない。カロは、寝ていたダニエルをつついて起こす。そして、「怖くない?」と訊く。「何が?」。「ここを出なくちゃいけないかも」。「なら、どこかよそに行って暮らせばいい」。「だけど、バラバラになったら、会えなくなっちゃう」(1枚目の写真)。そして、「離さない!」と言って、背中の下に入って抱きしめる。ダニエルも、「どこにも行かないよ」と応える(2枚目の写真)。
  
  

翌日、家主が水道を止める。ラーヴェンたちは、窓が割られないよう補強し、子供たちは敵が攻めて来た時のために弓矢の練習をする。次のシーンでは、ダリアとカロが大きなポリ容器を持って水を運んでいる。その時、偶然通りかかった家主に、ダリアは、「バッカーさん、やめて下さい。子供たちがいるんです」と直訴する。「金がなきゃ、水もない。単純だ。子供たちが心配なら、何とかするんだな。私は慈善家じゃない。人生、タダのものはないんだ」。「できるだけやってみます」。「イエスかノーかだ」。「幾らです?」。「1週間100〔ギルダー〕だ」〔1974年夏の換算で約1万円≒現在の1万5千円/かなり安い!〕。家主が去った後、カロは、「払わないわよね? もし払ったら、全部水の泡になっちゃう」と不満を漏らす。「ねえ、カロ、いつまでも逃げてはいられないの。最初はベルギー、そして また今度」。「ラーヴェンは、戦えって」。「ラーヴェンは、主張が通ると思ってるけど、通らないの」。2人は水を持ち帰るが、これだけの水では飲用と料理用にしか回せない。トイレも使えなければ、シャワーもだめ。しかも、今は夏ときている。シャワーの方は、カロが利用していたプールのシャワーで解決できた。カロとダニエルとタラは水着姿でシャワーを浴び、ラーヴェンとアリスは下着のままでシャワーを浴びる(1枚目の写真)。そして、集団で来た口実に、カロが泳ぐ時に声援を送る。泳ぎ終わり、ダニエルから、「ホントに速いんだ」と褒められ、カロは如何にも嬉しそう(2枚目の写真)。
  
  

次のシーンでは、ダニエルとタラの父親フランスが、突然訪ねてくる。父に抱き付く2人(1枚目の写真、矢印は変装して遊んでいたダニエル。左側の赤いキャップは変装したカロ)。「パパ、寂しかった」「太ったね」。フランスとダリアが話していると、「水だ!」と歓声が上がる。再び水が出るようになったのだ〔ダリアが内緒で部屋代を払った〕。ラーヴェンはダリアのところに来ると、「待てば海路の日和ありだろ」と自慢気に言う。父が去った後、カロは、「払ったんだ」と怒ったように言う。「だから、ここに居られるの」。そして、誰にも言うなと仕草で指示するが、カロは無視する。そのあと、水が出たことを祝って簡単な食事会が始まる。部屋の隅では、ダニエルとタラがフランスからもらったプレゼントを開けている。ダニエル:「タラのはバービー!」。それを聞いて、カロもプレゼントの方に飛んでいく。カロの袋に入っていたのは赤い服。ダニエル:「君のママと同じだ!」。フランスは「素敵だ」とダリアを褒めるが、カロはがっかり。その時、ダニエルが「やった!」と叫ぶ。ダニエルへのプレゼントは、スターボ(STABO)社のレーシングカーの模型だ(2枚目の写真)。フランス:「欲しかったやつだろ?」。
  
  

別の箱を開けたカロ。中には回転式のクリスマス・キャンドルが入っている。下の台に蝋燭を並べると、熱せられた空気が上昇し、その力で風車の羽根を回転させる仕組みだ。子供たちは、しばらくは回転するエンジェルに見とれていたが、やがてあきてしまう。カロは、ブランコを始め、ダニエルたちは、もっと蝋燭を集めてきて、皿に立てて火を点ける。そして、ダニエルが、プランコの下に火の点いた蝋燭を押しやる(1枚目の写真)。カロが頭を下げてブランコを漕いだ時、髪が下がってそれに蝋燭の火が引火してしまう(2枚目の写真)。ダニエルが、「カロ! ママ!」と叫び、気付いたアリスが飛んできてカロの髪を布で覆う。ダリアが遅れて駆けつけ、交代する。
  
  

フランスは、「もう十分だ、行くぞ。ダニエル、コートを着ろ」と命じる(1枚目の写真)。そして、「行くぞ、お嬢ちゃん」と言ってタラを抱きかかえる。ラーヴェン:「いったい何の真似だ?」。フランス:「こんな危ないところには置いておけない。分かったか?!」。カロは、自分の髪よりも、ダニエルが行ってしまうことの方が心配でたまらない(2枚目の写真)。3人が出て行くと、後を追いかける。カロは必死になって走るが、車に乗せられた2人は寂しげに手を振って去って行く(3枚目の写真)。
  
  
  

その後のカロ。プールでの練習も白けて熱が入らない。部屋の壁に、所在なげにスプレーをかけていて、父から「何が望みだ?」と訊かれると、「前みたいになること」と答える。それでも、母に連れ出されて、かつて父が街角に作ったシーソーに行った時、乗っていた子から、「お前の父さん大したもんだな」と言われると、鼻が高くなる。しかし、その帰り道で、母子は大変な場面に遭遇する。スコットとは別の建物の前で、警官隊とデモ隊がぶつかっていたのだが、その先頭にラーヴェンがいたのだ(1枚目の写真)。夜になってラーヴェンは戻って来たが、額から血を流している。カロはお湯を用意して手当する。しかし、状況は、さらに悪化する。家主がスコットの近くまでやって来て、ダリアに部屋代を請求。ダリアがお金を取りに戻った時、お札を数えているのがラーヴェンに見つかってしまう。結果、ダリアがこっそり部屋代を払っていたことがバレ、激怒したラーヴェンは、ダリアが演劇用に作ってきた衣装をすべて運河に投げ捨てる。当然、部屋代を渡すことはできなくなった。それにもかかわらず、その日には、カロの水泳教室での認定証の受領式もある。カロは、プールに投げ込まれた木の人形を抱え、背泳ぎで端まで泳ぐ。カロが渡されたのは、「人命救助」の小さな認定証。競泳はできなかったので、結局、こんなわびしい結果となった。外で待っていたラーヴェンに見せる時も、カロは嬉しそうには見えない。ラーヴェンは、カロに、「知ってたか、ママが家主に金を払ってたってこと?」と訊かれ、「ううん」と嘘をつく。しかし、ラーヴェンは、ダリアから全部聞いていた。そこで、カロの顔を手で挟むと、「なぜ、話さなかった?」と問い詰める。「ダリアが、みんなのためになる、って言ったから」。そう言うと、カロは、「もう行かないと」と、ラーヴェンの手を払いのける。「逃げ出そうとするのはいい加減やめろ。どこに行くんだ?」。「言わない」(2枚目の写真)。「じゃあ行け。好きなところへ」。カロは睨むようにラーヴェンを見つめる。「行けよ。誰も止めん」。
  
  

カロが向かったのはダニエルの家〔どうして知っていたのかは分からないが…〕。階段を上がった先にはドアが1つしかないので、かなり裕福な家庭だ。ベルを押すと現れたのは父親のフランス。「やあ、こりゃ びっくりだな。泊まりに来たのかい?」。「はい」。「大丈夫か? 泣いてない?」。「水泳の帰りです」。「じゃあ、おいで」。次のシーンでは、3人が揃ってTVの前で寝転んでいる。ダニエルがカロにコーラを渡し、「ほら、カロ」と微笑む。カロも微笑む(1枚目の写真)。相思相愛といった感じ。TVでは、ダンスが始まる。オランダ語で放送された初のポップ・ミュージック番組(1970~)、『TopPop』だ。ダニエルとタラが立ち上がって踊り始め、初めてだったカロも一緒に踊る(2枚目の写真)。次のシーンで、3人は寝る前の歯磨きをしている(3枚目の写真)。カロはパジャマを持ってないので、フランスが棚からダニエルのパジャマを取り出して渡す。
  
  
  

そして、そのまま ダニエルとタラはベッドに入り、カロは床に置いた簡易ベッドの上で寝る準備(1枚目の写真)。ダニエルが電気を消す。しかし、カロは何かが足りない気がして眠れない。目線はダニエルを向いている。最後に、「ダニエル」と囁く。そこで場面は切り代わり、朝となる。ドアを開けてフランスが入ってくる。最初に、まだ眠っているタラに毛布をかけて頬にキスし、次にダニエルを見ると、いない。そして、床のカロもいない。脇にあったインディアンのティピー風のテントを覗くと、そこには、頭にインディアン風の羽飾りを付けたダニエルとカロがパンツ1枚で抱き合って寝ている(2枚目の写真、右がカロ、左がダニエル)。いくらなんでも行き過ぎ、とフランスは考えたであろう。息子に悪影響があるとも思ったに違いない。何せ、あのラーヴェンの娘だ。最後のシーンでは、車に乗せられるばかりになったカロが、窓をじっと見上げている。窓には、ダニエルが立って、じっとカロを見ている(3枚目の写真)。車は、恐らくシトロエンDS。アッパーミドルクラスなので、ラーヴェンが最初に乗っていた車よりはかなり上等だ。このことからも、裕福さが分かる。
  
  
  

車が着いても、なかなか出ようとしないカロに、フランスは「何がしたいの?」と尋ねる。「私のお兄さんと妹と暮らしたい〔Ik wil bij mijn broer en zus wonen〕」。「両親が寂しがるぞ」。「ううん」。「私達と暮らしても解決にはならない」。この拒絶に、カロは絶望して、無言で車を出る。カロは、そのままスコットには戻らず、近くの軽食店に入り、ポム・フリッツを注文して席に着く。店内のTVでは、警察による不法占拠の排除の様子をニュースで流している。カロが見ていると、いきなりラーヴェン顔が映る(1枚目の写真)。アリスもいる。ダリアの顔もチラと見える。ヨープもバレいる。これは、前回のようなラーヴェンの単独行動ではない。カロのスコットが攻撃され、解体されているのだ。驚いたカロは、店を飛び出して〔食い逃げ状態〕、スコットに向かって走る。しかし、TVは実況中継ではなかったので、カロが着くと、すべては終わっていた。建物に通じる鋳鉄の橋の上には立ち入り禁止のロープが張られ、警官もいる。カロは構わず中に入って行く。スコットの中は破壊され、物が散乱している。出てきたカロは、橋の上でダリアと会う。そこにラーヴェンも合流して親子3人が揃う。ラーヴェン:「TVで見たのか?」。カロは頷く。「全部破壊された」。ダリア:「私の衣装もよ」。「比較にならん…」。ここでカロが、「やめて」と止めに入る。ダリア:「ベストだと思ってやったの」。ラーヴェン:「誰に?」。「家とカロよ。それに、あんたにも」。そして、「これからどうするの?」と尋ねる。「他のスコットを捜す。お前は、きっと来ないだろうがな」。カロは、「ママは一人で暮らす」と、母を擁護するように父に言う。母は、「あなたは?」とカロに訊く。「そっちで」。そして、今度は父を見て、「したい時にはいつでも、そっちで〔Chez toi quand j'ai envie〕」と答える(2枚目の写真)〔最後の3人だけの会話は、ベルギー人らしくフランス語〕。カロは、2人が分かれることは覚悟している。そして、交代で一緒に住みたいと考えている。そこに、アリス、ヨープ、バレがやってくる。カロは、「私にもできることがある。みんなには、できないこと」と言うと、橋から運河に飛び込む。そして、人命救助の訓練の時のように、運河の底に潜ると、沈んでいた「母の作った舞台衣装」を取って水面に浮かび上がる(3枚目の写真)。
  
  
  

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